ゲーム・アプリ開発者向けツール&ミドルウェア総合イベント「GTMF 2016 TOKYO」が2016年7月15日、秋葉原UDXにて開催となりました。
たくさんの講演や展示がありますが、やっぱり今のキーワードはVR(ヴァーチャル・リアリティ)。なかでもソニーがPS4でVRを楽しめる「PlayStation VR(PSVR)」を10月13日に発売するとあって、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアの秋山賢成さんによる“「PlayStation VR」の最新状況について”という題の講演には立ち見が出るほど。
講演のなかではPSVRの情報と同社が考えるVRコンテンツに必要なことや今後の課題などが語られたのでレポートしたいと思います。
【秋山賢成(あきやま けんじょう)】
ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア ソフトウェアビジネス部 次長
(株)ソニー・インタラクティブエンタテインメントにて、ゲーム・コンテンツ制作コンサルティング及び技術サポートに従事。多数の著名ゲームタイトルの制作に関わり、現在に至る。直近活動として、日本・アジアエリアにおいて、PlayStation 4 及び PlayStation VR の技術講演を日本・アジアイベントにおいて多数実施し、技術デモの制作なども行っている。Sony Interactive Entertainment Japan Asia ソフトウェアビジネス部 次長 兼 SIEJA 開発サポート責任者。
けっこう知られていない?PSVRの意外な機能
まずは、秋山さんのお話を聞いたなかで「これは知らない人も多そう!」というPSVRの機能をご紹介しておきます。
PSVRはゴーグルのような形をしていて、装着した本人がVR映像を楽しむものです。そう、たった1人で楽しむものだと思っていました。
しかし、PSVRの映像を四角に切り取ってテレビに映し出す「ソーシャルスクリーン」という機能を備えていて、装着していない人も映像を見ることができるんです!ミラーリングモードではPSVRで見ている映像をそのままテレビに出力可能。
(ソーシャルスクリーン・ミラーリングモード)
また、ソーシャルスクリーンのセパレートモードではVRプレイヤーとTVプレイヤーにわかれて遊ぶことも可能で、PS4ではこれを1台で実現しています。両者で対戦する楽しみ方もできるので、秋山さんはそういったゲームの登場に期待しているとのこと。
(ソーシャルスクリーン・セパレートモード)
PSVRで楽しめるのはVR対応ゲームだけではありません。「シネマティックモード」なら通常のPS4ゲームやBlu-rayの映画、YouTubeなどの映像、torneのビデオといったさまざまなコンテンツに対応。2.5メートル先に250インチサイズで見られる映像は凄まじいことでしょうね!変な話、テレビを持っていなくてもPS4が遊べるわけです!また、「メディアプレイヤー」ではUSB端子に接続したさまざまなメディアを再生することも可能です。
PSVRにはマイクが付いていて仲間と会話を楽しむことができます。別途ヘッドセットを用意しなくてもいいんです。し、知らなかった~。。。
現実に戻さない!ユーザーの「プレゼンス」を保つことがカギ
さて、VRだからこそ楽しめるポイントはゲームや作品の中に入り込むことができる点です。単なる没入感を超え、別の世界に自分が住んでいると錯覚してしまう、没入感の先にあるものを「プレゼンス」であると秋山さんはおっしゃっています。
例えば、PSVRを装着してすぐのときには当然自分がPSVRをかぶっていることをわかっているものの、体験しているうちに装着していることを忘れてしまう。つい体をのけぞってしまったり、崖で足がすくんでしまったり。それがプレゼンスです。
しかしながら、ユーザーはプレイ中にわずかでもストレスを感じる瞬間に遭遇するなど、ちょっとしたきっかけで現実に戻ってしまいます。プレゼンスをどう保つかがコンテンツ開発者にとって大切になってくる、とおっしゃっていました。
PS4でVRを体験できる意義としては、安価で同じ統一した規格で体験でき、有機ELで120fpsでの表現が可能なので、残像を防いだよりリアルで自然な映像を楽しめ、技術的にユーザーのプレゼンスを保つことが可能です。ここまでハード側でできると、あとはコンテンツとしての魅力があるかどうかですよね。
開発面としても非常に簡単だそうで、Unityなどの各社がPSVRへの対応をしてくれているため、PS4ゲームを作るとすぐにPSVRへの対応できるようになっているそうです。このあたり僕はぜんぜん詳しくないので各社にてご確認くださいね。
PSVRの参入パブリッシャー&デベロッパーはとても多く、国内では35社あります。全世界で230社以上も!
PSVR対応のゲームタイトルを挙げると、たとえば「サマーレッスン」はUnrealEngineを利用し、“実際感”を出しています。UnrealEngineはソースが公開されており、カスタマイズして応答速度を高速化。残像感のない映像を実現できたんだとか。また、初音ミク、バイオハザード7、FF15 VR、バットマンなど多くのソフトがVR対応ゲームとして登場します!
打ち切られた予約は再開へ!夏のイベントでは体験会も
PSVRの予約が開始となったのは6月18日ですが、あまりにも人気で早々に打ち切りとなってしまいました。僕は予約開始日にSNSをウォッチしていたのですが、この日が予約開始日だということを知らない人がとてもたくさんいた印象。
GTMFの会場にも予約できなかったという参加者がたくさんいました。なお、ソニーではPSVRの予約再開に向けた準備を進めているとのこと。欲しい人はもう少し待ちましょう!
ソニーストア大阪や一部の量販店で体験会を実施。ぜひ、一度体験してから予約・購入を検討してほしいとのことです。
また、7月16日(土)からお台場のフジテレビや青海エリアで開催となる夏のイベント「お台場みんなの夢大陸2016」では、めざましテレビ特別バージョンのPSVRゲーム「THE PLAY ROOM VR」が体験できるそうです!めざましテレビのアナウンサーがゲーム内に登場するこのイベントだけの特別版。さらに、桐谷美玲が主演のドラマ「好きな人がいること」のPSVR版映像も楽しめるようです。気になった人はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
VR普及のための今後の課題
秋山さんはVRの普及に向けた課題を挙げ、会場にいるクリエイターの皆さんに語りました。おそらく、このセッションの中で最も重要なのはこのメッセージだったのではないでしょうか。その一部を要約すると以下のとおりです。
「VRの普及にはクオリティの高いコンテンツが最重要であり、クオリティが高いコンテンツとは、酔わないとかプレゼンスなどすべてにおいて(開発を)妥協しないこと。どうしてVRコンテンツを作っているのかを徹底的に追求し、試行錯誤をたくさんしなければいけない」
と言う一方で時間は有限なので、ノウハウをみんなでシェアすることが必要であることにも言及。特に海外ではVRに関する情報交換は密に行われているそうです。ただ、日本では外部流出を恐れてなかなか他社との情報交換を積極的にはしづらい印象がありますが、皆さんはどうでしょうか?秋山さんによると、自分がやっていることを外部に出していいのか、出しちゃまずいんじゃないか、と考える人が多いようで、これからはそういった情報はみんなで共有した方が良いとおっしゃっていました。
また、VRについての偏見にも触れ、消費者に対してVRを実際に体験してもらう機会を増やし、体験したユーザーからの声を聞き取り、VRへの偏見をなくしていく必要があると。「百聞は一体験にしかず」。VRの良さは聞いただけでも見ただけでもわからない。この良さは体験しないとわからないと言い、「PlayStation VR」のセッションを締めくくりました。
@asuka_xpの感想
14年目を迎えたゲーム開発者向けのイベント「GTMF」は僕のようなブロガー・メディア関係者を除くと、プロデューサー、ディレクター、プランナー、プログラマー、デザイナー、サウンドクリエイターといった関係者の参加がほとんどです。2016年はやはりVRに関する講演や展示が非常に多かったように感じましたね。ゲーム関連製品のなかで、PSVRは今年イチバンの注目製品と言っても過言ではありません。
しかし、ユーザーにとって、一体どういったソフトが登場するのか?VRゲームは話題になっているほど本当に面白いものなのか?というのが非常に気になる部分であると思います。PSVRのゲームは特別難しい負担はなく開発できるそうなので、ゲームメーカーさんは現在開発中もしくは今後開発予定のPS4ソフトをすべてPSVR対応にしてくれると喜ぶユーザーが多そうです。
ちなみに、ソニーによるとPSVR対応ソフトは年内に50タイトルほど登場するそうですから、“ハードだけ買っても遊びたいソフトがない”寂しい状況は回避できそうです(笑)PSVRを体験できる機会をできるだけたくさん用意するとも言っているので、皆さんもどこかで一度は体験した方がいいでしょう。
僕はGTMFの会場でこのPSVRを装着し、特別に2つのゲームを体験させていただきました。スタッフさん2人と一緒に複数プレイをした模様はまた別の機会に記事に書きたいと思います!
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