JR東海・紀勢本線の特急南紀を含むすべての列車が停車する三瀬谷駅(みせだにえき)。三重県多気郡大台町の佐原エリアにある小さな駅で、奥伊勢や大台ケ原を観光する際に拠点となる所です。
それにもかかわらず駅前はなぜか寂しく、駅そのものも駅員のいない無人駅なのがビックリなんですけど、この三瀬谷駅ができた大正14年(1925年)は随分と賑わっていたようです。
僕は観光のPRと事業者向けにブログレクチャーをするというお仕事を大台町商工会からご依頼いただきまして、大台町に5日間滞在。その間ずっと、JR東海が三瀬谷駅を放置プレーしているのが気になって仕方がありませんでした!無人駅っていうことが気になっていたわけじゃないんですけど、それはまた別途記事に書きたいと思います。
「萬栄」はボリュームあるランチが魅力!
さて、今回は三瀬谷駅の開業当時から時を同じくして今日まで営業を続けている食事処&旅館の「萬栄(まんえい)」を訪れました。
二代目の辻本重次さんから貴重な写真資料のコレクションを見せていただき、三代目代表の辻本佳弘さんからは現在経営する旅館と飲食店の現状と課題をお伺いしたのですが、ランチ時には一般客としておいしいご飯をいただきましたので「宿泊だけじゃなく、ランチやディナーの利用にもいいぞ!」とご紹介しておきたいと思います!
【味処 萬栄(まんえい)】
営業時間:11時~14時、17時~20時
住所:(地図)
ランチはボリュームがあって大満足!Wi-Fiや電源コンセントも
萬栄はもともとは和風のお店だったそうなんですけど、モダンな感じのキレイな内装にリニューアル。実際にランチを食べに行ってみると、非常に居心地がいいお店だなぁ~と感じましたよ。
僕は「鉄板みそ焼きうどん定食」をオーダー。うどんの定食って炭水化物&炭水化物なわけで、読者の皆さんには想像してもらっただけでも最高だというのがおわかりいただけるかと思います。
出てきたのがこれ!
味噌で甘辛く炒められたうどんは絶品!ご飯のおかずとしてもピッタリで、食が進みます。おいしかった~!赤だしの味噌汁とお新香、冷奴も付いて、これでお値段730円。リーズナブル!
実は後日に目撃するナポリタンもそうだったんだけど、この近辺の飲食店は麺料理を玉子で閉じる傾向にあるんですよね~。面白い!
実は、店に入ってからずっとムズムズしていたんだけど、決してトイレを我慢していたわけじゃない。あれだ、あれ。なんとこの店、電源コンセントが至るところにあるんですよ!!
ここにも!
あとで三代目代表の辻本佳弘さんに確認したところ、これは調理器具を使うための電源コンセントらしいけど、別にこれでスマホやパソコンを充電しても良いみたい。ただ、パソコンで作業するお客は今までまったくいなかったそうです(笑)フリーのWi-Fiもあるし、これほどまでにコンセントが充実した飲食店は都会でも珍しいので、逆に最先端ですごいな~と思ってしまいましたよ!
一緒に行った商工会の方々がオーダーしたのは「萬栄トンテキ定食」(980円)、「みそカツ定食」(860円)と、こちらもおいしそう!
大正14年から続く老舗旅館 萬栄
最初、てっきり定食屋さんかと思っていた萬栄ですが、実をいうとその正体は旅館なのです!創業は三瀬谷駅と同じく大正14年(1925年)。90年以上も営業している老舗旅館ですよ。下の写真のとおり、奥(写真左側)に旅館の入口があります。
客室は8部屋。個人で泊まる小さな部屋から、サークルや部活動の合宿など大人数で寝泊まりできる大きめの部屋まであり、全部屋利用での最大宿泊人数は29人とのこと。
近くでソフトボール女子の大会があったときは大人数すぎて対応しきれず、複数の旅館で対応。その時、萬栄には25人くらいを受け入れたそうです。個人客よりも団体客の利用が多い印象でした。
ここで二代目の辻本重次さんが「ワシは記録をつけるのが趣味でのぉ~」と言いながら、さまざまな新聞の切り抜きや写真を貼ったお手製の資料を見せてくださいました。
昭和33年、宮川ダムを作るときに工事関係者のお客さんが旅館に泊まりにきて接待が連日行われ、当時はものすごく潤ったそうです。宮川ダムが完成しても、次は国道42号線の工事、次は電話線敷設工事、次は高速道路、最近では平成16年の宮川の大災害対応。この萬栄は作業員が工事期間中に寝泊まりする宿として利用されながら今日まで潰れずに済んだ旅館だったのです。
そして、萬栄だけでなく、大台町は街全体がこういった工事の恩恵を強く受けてきたこともわかりました。重次さんのお話によると「観光じゃなく間違いなく工事で発展した街」とのこと。その昔、映画館は3つもあったそうで、旅館も今よりもたくさんあったんだとか。
大きな公共工事がなくなったことから街から次々と人が消え、シャッターが降りたままの店舗が増加。ようやく危機感を持つようになった一部の人たちが立ち上がるも、なかなか上手くいっていないのが現状です。そんな萬栄も一般客の少なさが目立ちます。
課題は閑散期の宿泊利用
萬栄にとっての閑散期は5~6月とのこと。しかし、日本一の清流「宮川」や一部が世界遺産にもなっている「熊野古道」へは決してそう遠くない立地であることから、春・初夏でもお客さんを呼べる可能性はあるはず。
そもそも、萬栄は大台町で唯一特急列車が停車する三瀬谷駅と鼻の先の距離。めちゃくちゃアクセスが良い旅館なのです。立派なWebサイトとFacebookで情報を発信しているとはいうものの、アピール力がまだまだ足りないということでしょうか。
1つ大きなニュースをご報告しておきますと、三重県大台町は2016年3月に世界遺産クラスの生物圏保存地域(Biosphere Reserves:BR)、いわゆる「ユネスコエコパーク」の認定を受けることが決まっています。
ユネスコエコパークに認定されることで知名度が上がり、美しい宮川を見にきたり、近畿の秘境と呼ばれる大杉谷を登山したりと、国内外からの観光客増加が見込める場所なんです。ぜひとも萬栄には観光客を待っているだけでなく積極的にアピールしたり、設備の改修を進めるなどして、せっかくのチャンスを逃さないようにしてほしいな~と思います。
駅前のカフェとして利用できたら嬉しいのに~!
「平成27年刊 三重県統計書(10 運輸・交通)」によると、平成25年度の三瀬谷駅から乗車した人数は1日あたりわずか188人。列車の本数はだいたい1時間に1本。特急列車は1日に4本です。なので、客数は少ないものの、待合室で列車の到着を待っている人が必ずいます。
萬栄は駅前という場所の良さがありますから、この待ち時間をチャンスに変えることができそうな気がしたんですよね。現在はランチ後からディナータイムまでの間、一時的に閉店しているのですが、列車待ちしてる人にお店をカフェとして利用してもらうのはどうかと萬栄に提案。電源コンセントもWi-Fiもある駅前のお店というのはやはり貴重です!ここで体力もスマホも充電してから列車に乗れれば、どれだけ助かることか!
そして、カフェ利用する人が増えれば萬栄の知名度も上がるでしょうし、併設する旅館の宿泊客増加へもつながる可能性があります。なにより、駅前に何もないというのが三瀬谷駅や大台町にとっては危機だし、逆にそれが萬栄にとっては最大のチャンスだと思うんですよね。やったもの勝ち、と。
あとで書こうと思ったんだけど、そもそも三瀬谷駅の改札はなぜか萬栄側(北側)にしかなく、反対側(南側)にはマックスバリュや役場があるのにもかかわらず改札がなくて不便なのが大問題なのですが。。。
良いところも悪いところも含め大台町の情報を発信していく
大台町の観光について情報発信するのが僕のミッションの1つだったのですが、萬栄を訪問してお話を伺ったことから観光地としての歴史がないことがわかり、大台町の観光はこれからが本当のスタートなんだと思いました。また、街全体で観光客の受け入れ体制ができていないことも肌で感じ、観光をPRする以前の問題かも。。。
いや、これは僕にとって他人事ではなく、これからも一緒に考えながらご協力したいと思っています。第三者の視点だからこそ気づいた大台町の改善すべき点をどんどん指摘し、良いところもガンガン発信していくつもりです。外の人間がこうやって指摘することで行政や街の人が立ち上がってくれれば一番嬉しい!
今回の萬栄はランチでいただいたメニューがおいしかったですし、三代目辻本佳弘さんのお話は面白かったしですし、とっても良い雰囲気のお店でした。次回訪れる際にはどう変わっているのか、非常に楽しみです!
→ 旅館 萬栄
→ 萬栄 Facebookページ
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