古くから人や物の行き来によって道ができ、それが古道として今では観光名所の1つになっていることも珍しくはありません。
長野県北安曇郡の小谷村には、日本海から信州の松本城まで塩や海産物を運んだとされる「塩の道」が通っています。
この地域ではかつて冷蔵庫のない時代に保存用として塩蔵品の生産が行われており、春や秋に収穫した山菜や季節ごとに採れた野菜を塩に漬け、必要なときに塩抜きして加工品を作る文化が定着。そこから小谷村の名産品「小谷漬」が生まれました。
小谷村は北安曇郡(小谷村・白馬村・松川村と池田町の1市3村1町)の1つでして、北安曇郡と大町市を巡るプレスツアーに参加した際に、この小谷漬を生産している大北農協山菜加工場を見学しました。
そこで見て聞いてきた小谷漬と、取材を通じて感じたことをぜひご紹介したいと思います。
塩の道の門外不出のタレで作られた小谷漬
僕は漬け物が大好きなので、昔から実家でキュウリのぬか漬けや白菜の浅漬けをしょっちゅう食べていました。ご飯が進むんですよね~!漬け物は野菜が育たない冬場の貴重な栄養源として昔の人が生み出した知恵の結晶。
小谷村で盛んな塩蔵(塩漬け)は塩分濃度が30%にもおよび、そのなかでは微生物が生きることができないそうです。このおかげで野菜や山菜の長期保存を可能にしています。
小谷村の方言でごちそうのことを「おごっつぉ」と言います。小谷村で採って塩蔵したキュウリ、大根、にんじんなどを塩抜きし、門外不出とされる独自の醤油タレを使用して作ったものが「小谷漬」。ここでしか製造することができないおごっつぉなんです。
その独自の醤油タレが一体どうなっているのか、ちょこっとだけ教えていただいたのですが、この漬けタレを作れるのはこの世に数名しかいないそうで、使用している醤油は某大手メーカーの特上以上のランク。調味料を自社で調合し、人の手によってそのときどきの条件に合う味に調整しています。
伺ったお話では小谷漬を作る工程には非常に人の手がかかっている印象を受けました。最終的には機械で製造していますが、逆に、機械を通すために素材を手で切らなきゃいけません。全自動化ができないし、大量生産はできないんです。
そのぶん人件費がかかり、製品価格としてはやや高めになってしまうものの、村の人が守り続けてきた秘伝のレシピと愛情で作られた小谷漬をとても魅力的に感じました。
大北農協山菜加工場が作っている漬け物にはいくつか種類がありますが、なかでも小谷漬はリピーターが多いそうですよ。
買ってきた小谷漬を白いご飯で食べる!
取材後に寄った道の駅・小谷で小谷漬が販売されていたのでさっそく購入。300グラムで価格は380円でした。
小谷村で採れたキュウリ、大根、にんじんなどをしっかり使用しています。
食べてみると決して塩っぱすぎるという感じはなく、程よい塩気のなかに甘さも十分にあります。当然ながら白いご飯にピッタリです!ご飯がすすむ!!塩の道で生まれた小谷漬はまさに「おごっつぉ」でした!
秘伝のタレとレシピですから誰でも作れるものじゃないのはわかっているけど、その地域に行ってみたいとかそこへ行かないと食べられないと思わせる地域の名物は実はとてつもない強みを持っています。香川で自信を持ってオススメできるおいしい讃岐うどんとか、仙台にしか出店していない牛タン、沖縄で絶対に食べたいソーキそばとラフテーなんかもそうですね。こういうのって地域に行く理由になるし、地域を知るきっかけにもなるんですよね。今回の取材では塩の道で生まれた小谷漬のストーリーを知ることができてとても面白かったなぁ。
小谷漬は300グラムとけっこう量が多かったので器にあけて冷蔵庫で保存し、また好きなときに食べたいと思います!
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