企画イベント

遺伝性の乳がんを調べるために遺伝子検査は有効な手段と知った。第4回ピンクリボンセミナー【PR】

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乳がん ピンクリボンセミナー

2017年10月1日、乳がんの早期発見や治療、正しい知識を広げるための「第4回ピンクリボンセミナー」が栃木県宇都宮市で開催されました。

僕は会場となった“とちぎ健康の森”を訪れ、3人の先生から乳がん治療・検診や予防についての講習を聞かせていただきました。そこで最新の知識を学んできましたのでブログでまとめたいと思います。

ただ、たいへん申し訳ないのですが僕には難しすぎる話もあったため、読者のみなさんにヘタな誤解を与えぬよう細心の注意を払いながら記事にしました。あくまでも聞いた内容をもとに書いたレポートをお届けします。

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遺伝性の乳がんなら他の遺伝性のがんリスクも

NPO法人ピンクリボン宇都宮理事長 佐藤俊彦氏によるお話は「遺伝性乳がんと画層診断」についてでした。

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通常、日本人女性の乳がん発症リスクは9%ですが、その内、遺伝子が原因とされる遺伝性乳がん(HBOC・Hereditary Breast and Ovarian Cancer)は40~90%を占めるそうです。遺伝性乳がんは一般的ながんとは異なり、そもそも遺伝子の異常から発症すると言え、たとえ遺伝性乳がんを治したとしても、遺伝性卵巣がん、遺伝性膵臓がん、といった遺伝子を原因とする他のがんの発症リスクが高いそうです。

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つまり、自分に遺伝性のがんがあると判明した場合、自分の持つ遺伝子を調べないと本当の対策ができないわけです。

遺伝子なので自分だけでなく、親や祖父母といった家系の状況も知る必要があります。佐藤氏は祖父母が元気なうちに家系図を作っておくことを推奨しています。乳がんが多発している家系はぜひ遺伝性異常の有無を調査してみましょう。

遺伝性乳がんのうち、どんな遺伝子が原因なのか。原因とされる84%の遺伝子(BRCA1・BRCA2)の正体は解析によって判明しています。なので、遺伝子検査をして自分がそのBRCA1・BRCA2を持っているとわかれば、遺伝性乳がんに対してあらかじめ備えることができるわけです。遺伝性乳がんはBRCA1・BRCA2の異常によって生じます。

佐藤氏は乳がんを見つけたらそれが遺伝性のがんかどうかをチェックする仕組みが必要だと訴えました。現在そのようなチェックは義務化されていないため、せっかく乳がんを治療しても他の遺伝性がんが発症してしまう、といったことが起こっています。遺伝性のがんと一般的ながんは予防法・治療法が異なります。

ここでBRCA遺伝子の異常によって生じるタンパク質を自然に殺す飲み薬「オラパリブ」が紹介されました。オラパリブは欧米では予防薬としての治験が進められている薬。佐藤氏はこれの認可が下りれば、(乳房の切除など)予防切除が不要になる時代が訪れると言います。

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HBOCを疑い、遺伝子検査を受けましょう。と、続けました。

検診はマンモグラフィよりもMRIがオススメだそうです。ただ、どの画像診断をしてもひとつで全てを調べるのは無理なので、複数の画像診断を受けると良いのだとか。なかでもPEM検査は乳がんを最も早く発見できる検査だといい、強く推奨していました。

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まとめ

  • HBOCをまず知る
  • 家系図を作り、遺伝子検査をする(男性が遺伝子を媒介していることもある)
  • BRCAは県立がんセンターで検査可能
  • 検診方法はPEMがおすすめ。同時に卵巣がんをMRIでチェックする

 

血管からがんを治す

Clinica E.T.EASTの奥野哲治氏には「標準的でないがんや痛みの治療の最前線『血管からがんを治す、痛みを治す』」についてお話していただきました。

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がんの治療を行ったにも関わらずなかなか治らないと言って来院する患者さんや、手術や抗がん剤、放射線治療を終えた患者さんが多く奥野氏のもとを訪れるそうです。がんそのものではなく、血管からがんを治そうというのが奥野氏の考えだそうで、実際に奥野氏は今までに5,000近い数の患者を治療してきています。

人の血管は正常だとキレイな網目状となっていますが、血管の枝分かれのバランスが崩れて網目が過密となると、血流が渋滞して低酸素状態になってしまう。低酸素状態はがんにとって好都合な環境で、細胞を増殖しやすいんだそうです。

治療法としてナノ化薬剤。ステージ4の乳がん患者でも、ずいぶん腫瘍の縮小が見られたのだとか。また、RCBTもある程度の腫瘍縮小効果が期待できるとの見方を示しました。

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奥野氏のお話は素人の僕にとっては非常にレベルが高く、とても一般向けではなかったのですが、それでも血管から乳がんを治療する方法があるのだと知れて、個人的にすごくビックリしましたよ。

怖くない。放射線治療の真実

自治医科大学放射線科・中央放射線部教授の若月優氏に講演いただいた内容は「乳がん治療における放射線治療の役割」についてです。

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放射線治療とは術後の放射線治療と、転移・再発の症状緩和のための放射線治療があります。

乳がんの乳房温存療法(BCT)は2000年代に入ってから主流になっているそうです。そこに放射線治療を追加することで、10年後の再発可能性はBCT単独と比べて35%→20%に下げることが可能になりました。再発リスクの軽減率に加え、死亡率は4%ほど減少につながっているため、放射線治療は効果があると若月氏は言います。

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放射線と聞くと何だか怖いイメージがありますが、診断や検査、治療でも多く使われているものです。がん治療としては陽子線や重イオン線なども多く使われるようになっています。

そもそも「放射能」と「放射線」は違うことをわかっていない人が多いんだとか。

放射能と放射線の違いは、例えば懐中電灯で例えると、光を出す能力が放射能で、光そのものが放射線にあたります。体に放射性物質が残るリスクについては、ほとんどの放射線治療に関しては体内に放射性物質が残らないとのこと。

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実はドイツでは1896年からX線による乳がん治療が始まっていて、100年以上も前から治療に放射線が使われていることにビックリしました!

放射線治療とは痛くも熱くもない治療です。レントゲンと同じX線を使用し、乳がんを対象とした放射線治療の治療時間は1回あたり10分、1日1回・週5回。計25回の治療で済むとのこと。透過性を高めるためレントゲンの100倍強いエネルギーのX線を使用し、体の奥にあるがんまでX線を送り込んで治療します。

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放射線が当たった細胞のDNAにはキズができ、その細胞は分裂死します。がん細胞は細胞分裂をたくさん行っていて、放射線にはとても弱い。放射線治療は正常細胞へもダメージを与えるものの、がん細胞の方がたくさん死滅し、正常細胞が回復するのを待つことでがんを治すという方法です。今は16回、3.2週間で終わる治療法も最近行われているんだとか。

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気になる副作用については、放射線治療は局所治療なので副作用は原則として放射線を当てた部分のみ。当てたところの皮膚が炎症したり、乳がんの場合は放射線が多少は肺に当たってしまうので肺に影響が出ることも。治療してから数年後に出てくる副作用もあるそうです。ただし、全員に副作用が出るわけではないです。お酒に強い人・弱い人がいるように、副作用が出るのも人それぞれと言います。

サイバーナイフという新しい技術も登場しています。患者が動くと自動的に追尾し、照射側が位置を補正してピンポイントで放射線を照射できる装置で、より患者さんに優しい治療が可能になってきているそうです。

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最後に若月氏は、歴史ある放射線治療とコンピュータの進歩でより良い放射線治療ができる、とまとめて講演を終えました。

初めて乳がんについて学ぶことができた

このイベントにはいくつかのブースも出展されていて、中でもリアルに近い乳がんの“しこり”を触って体験するコーナーは人気を集めていました。この乳房の模型には一部にボール状の堅い部分があり、それが乳がんであることを触ってわかるというもの。僕も“しこり”に触れてみたところ、しっかりと硬さを感じることができました。実際にはもう少し柔らかいとのことですが、それでも触ってみればわかるそうです。

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また、クリエイターによるアートの販売もあり、売上の一部はNPO法人ピンクリボンうつのみやに寄付するという活動も行われていました。

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今回参加したピンクリボンセミナーは僕にとって生まれて初めて乳がんについてしっかり話を聞く機会となりました。

①遺伝性の乳がんがあること
②遺伝性の乳がんがあることは他の遺伝性がんのリスクもあるということ
③早期発見にはPEMとMRIの検診をするのが良い
④がんは血管から治療が可能である
⑤放射線治療は安全で優しい治療ができる

などを知ることができました。非常に難しい内容ではありましたが、これらを学んだだけでも僕にとっては大きな一歩かなと思います。ピンクリボンセミナーに参加できて良かったです。来年もおそらく栃木県宇都宮市で開催される(無料)でしょうから、ぜひ気になった方は参加してみてはいかがでしょうか。

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なお、登壇した同理事長の佐藤俊彦氏は10月25日に「最新放射線治療でがんに勝つ サイバーナイフとトモセラピーが、がん治療を変える」という書籍を出版するとのこと。良かったら手にとってみてください。

 

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