さて前回のニワトリ達の話の続きだ。
ヤツらが飼育小屋にきてからだいたい一年が過ぎたころ、ヤツらは俺達の腰より少し下くらいまで嘴がとどくようになり、立派な鶏冠が立っていた。それと共にヤツらの凶暴さは世話を任された俺達でさえ対処するのが困難な程になっていたのだ。
以前のように突っつかれても平気というわけにはいかなくなった。突っつかれれば痣どころか普通に刺し傷になり、傷が深いと出血することも度々あった。なので鳥小屋に入ったら常にヤツらに注意を向けて、強気な態度でいなければならない。少しでも弱気な態度を見せると、質の悪い不良のようにここぞとばかりにちょっかいをかけ始める(ちょっかいと言っても先に述べたとおり普通に怪我をする)。
そして何より気を付けなければならないのが、餌箱を運ぶ時などに屈むときだ。屈むとだいたいヤツらの嘴の高さに俺達の目の高さが合ってしまう。どういう訳かヤツらは、この瞬間に攻撃的になるのだ。ただでさえ危険な攻撃がこの時には洒落じゃすまなくなる。何故なら足を突っつかれても出血する程なのに、目など突っつかれたら失明することは必死だ。なので屈む必要のある作業は慎重かつ迅速に行わなければならないのだ。
しかしヤツらにも弱点があった。それはゴキブリである。まあ、弱点と言っても「キャー」とか言って逃げ回るわけではない。むしろ逆で、ゴキブリを狩るのに夢中になって追いかけ回るのだ。そしてヤツらは仕舞いにはケンカを始める。それが終わる頃に鳥小屋に入ればヤツらは疲弊していてたいした攻撃をしてこないのだ。これも不幸中の幸いなのだが、飼育小屋には冬以外なら常にゴキブリがいるのでこの作戦を行うのに困ることはなかった。ついでにゴキブリを駆除できるので一石二鳥だった。
まあ、こんな感じで卒業までヤツらとの闘争は続いたのである。さて、次回は最後にウサギについて語ろうと思う。たぶん俺にとっては一番思い入れがあることなのでうまく語れればと思う。
ではまた