2014年12月1日、話題のニュースや有名サイトの情報をスマホ向けに配信するニュースアプリで知られるスマートニュースが東京・赤坂で「SmartNews Compass 2014」を開催しました。
スマートニュースがどこへ向かおうとしているのかを明らかにし、パートナーとともに考えていくためのイベントで、会場には同社の目指す道を知ろうと700名のメディア関係者やエンジニアが参加。
当め~んずスタジオは報道関係者としてご招待いただきまして参加してきました。どんな発表があったかのかをお伝えしながら、併せて僕が感じたことを読者のみなさんへお届けしたいと思います。
良質な情報を届け、興味を広げるメディア
発表された内容は実に盛りだくさんだったのですが、まずはしっかりお伝えしておきたいことがあります。
スマートニュースのミッションは「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」です。
代表取締役会長で共同創業者の鈴木健氏はソーシャルメディアで自分の興味ある情報だけを取得する人々が増えていることを危惧しているそうです。確かに、テレビを見ない、新聞を読まない人が増えたとよく聞きますね。ネットを活用すればどうでもいい情報を遮断し、自分が興味のある1つのジャンルを濃く、深く知ることができるようになりました。情報のパーソナライズです。
ただ、鈴木氏はパーソナライズ化を否定するわけではないと指摘。今必要とされているのは興味を狭めるメディアではなく、興味を広げるメディアであると語っていました。そのためにスマートニュースは良質な情報を伝える、と。
スマートニュースはコンテンツへの愛を表明したうえで、多くのパートナーメディアとともに成長するため、新たにモバイルニュース広告を展開すると発表したのです。
発表された内容一覧
- SmartNewsの日間アクティブユーザーは200万人、月間は400万人
- モバイルニュース広告「SmartNews Ads」(以下の2種類)を本日2014年12月1日より開始
「SmartNews Standard Ads」・・・ネイティブ広告
「SmartNews Premium Movie Ads」・・・動画広告 - mixiと共同で開発したネイティブ広告ネットワーク「SmartNews Ads Network」・・・SmartNewsに加え、サイバーエージェント、グリー、DeNA、毎日新聞、産経デジタル、mixiが参加し、国内最大級のネイティブ広告ネットワークを構築へ
- 「SmartNews Media Prosper」の開始・・・チャンネルビューに掲載の新広告開始に伴い、チャンネルプラス運営メディアに対して広告収益の40%を還元
- 「SmartNews Nonprofit Program」・・・非営利団体に広告枠の一部を無償で提供
- 有料コンテンツを2015年に開始※
※講演後のセッションで発表
バランスの良いアルゴリズム
世界中の多様なニュースを中立な立場から世界中に届けたい。そう言うのはもう1人の共同創業者で代表取締役社長である浜本階生氏。
情報を見つけて選定し、利用者に届ける仕組みを築くため、独自開発の強力なアルゴリズムが同サービスの支えとなっています。
配信するニュースのバランスの良さは10月にスタートしたアメリカ版でも高い評判を得ているそうです。
実は1つのアルゴリズムで日本版とアメリカ版のニュースを読むことが可能なんだとか。今、手元にあるアプリの設定を変えるだけで使えます。近いうちに英語圏向けのインターナショナル版をリリースする予定であることも明らかにしました。
開発秘話として、2010年に浜本氏の自宅に積んでいたパソコンがスマートニュースのアルゴリズム「スマートエンジン」の前身だったとのこと。このニュースはいつどこで誰が何をしたことに関するものなのかを情報として機械が把握できるそうです。
現在、スマートエンジンで挑戦していることの1つは「文章のあいまい性」の解析だそうですよ。
良質な情報を広告にする「SmartNews Ads」
広告事業責開発担当の川崎裕一氏は非常にユニークな発表でした。2014年7月にジャストシステムが調べた数値を公表したのですが、「スマホの操作でミスタップを経験したことのある人」が63%もいたそうです。これは広告がコンテンツの邪魔をして、ミスタップさせたからだと指摘。
スマホユーザーは全世界に20億人いるといわれていますから、つまり、この数値から推測するには12億人にミスタップの経験があることになります。
川崎氏はこの状況は人類にとって大きな損失になると考え、自分たちで広告商品を作ることで解決することにした、と。コンテンツとしての広告、「SmartNews Ads」です。
普段はお酒を飲まず、ウイスキーを少し飲むくらいだという川崎氏は、サントリーのサイトがウイスキーに合うチョコレートを紹介している例を挙げ、これが良質な情報であると指摘。
「SmartNews Ads」のうち、良質な情報をネイティブ広告として提供するのが「SmartNews standard Ads」であり、また、企業が持つ動画を広告として活用・掲載するのが「SmartNews Premium Ads」と紹介。スマートニュースはこの2つを軸とする広告サービスを12月1日より開始しました。
スマートニュースの収益化
リリースから2年弱、売上はほぼゼロでやってきたスマートニュース。「SmartNews Ads」の開始によってようやく収益を出せるステージに入りました。
1日に200万アクティブユーザーがいれば、広告の価値として魅力的なんじゃないでしょうか。これは単なる数値の上だけでなく、良質なコンテンツを届けるスマートニュースだからこその信頼が強みになっているとも言えそうです。
mixiと共同で開発したネイティブ広告ネットワーク「SmartNews Ads Network」にはmixiに加えGREE、DeNAも参加し、国内3大SNSが参加が決定。毎日新聞と産経デジタルのほか、サイバーエージェントの名も。さらに、サプライズとして同業のニュースアプリを手掛けるNewsPicksも参加が発表されました。
一部バイラルメディアが記事のパクリ問題で揺れていますが、講演中に鈴木氏は「我々はコンテンツを愛している」というフレーズを何度も口にしており、一部バイラルメディアへのアンチテーゼであるように聞こえました。
講演後の囲み取材で、そういった悪質な一部バイラルメディアについてどう思うか鈴木氏へ質問させていただきました。
すると、スマートニュースではオリジナルの記事にトラフィックが行く仕組みにしており、万が一似たような記事が他にあった場合、どの記事が先にリリースされたかをかなり高い精度で把握できるとのこと。今後もこの精度を高めていきたいとおっしゃっていました。
僕の周りには見知らぬニュースサイトに無断で記事を丸ごと転載され、あたかも自分で書いた記事かのように掲載され、困っているブロガーが何人もいます。あれはひどい。
スマートニュースのようにオリジナルの記事への導線とコンテンツ提供者への還元をきちんとしていれば、僕としてはものすごく安心です。
@asuka_xpの感想
実は90分におよぶ発表イベントの後、35分~55分のセッションが3ステージあり、僕が選択したステージはどれも魅力的なものばかりでした。ただ、あまりにも内容が盛りだくさんなのでそちらは割愛します。
しかしながら、1つだけご紹介すると、メディア事業開発担当の岩塚知世氏が発表の最後に「One more thing」として、2015年に有料コンテンツの配信をスタートさせたいという構想をおっしゃっていました。
2013年の夏、スマートニュースがまだゴクロという社名だったとき、現執行役員メディア事業開発担当である藤村厚夫氏を取材させていただいたことがあったんです。そこからわずか1年でニュースアプリでアクティブユーザー数国内No.1の地位に。
広告を開始し、回収のステージに到達したんだな~とホッとした面も。やっぱり、素晴らしいサービスは続いてほしいですもん。
→ 「SmartNews」の株式会社ゴクロを取材!君はエスカレーターに乗ってる無駄な時間を情報のインプットに変えられる!
ネイティブ広告に関する議論はまだまだ続きそうではあるメディア業界ですが、スマートニュースがネイティブ広告への本格参入を発表したことをきっかけに、この流れは加速していく予感がします。
ブログで情報を発信しながらさまざまな収益源を模索している僕にとって、最先端のメディアと広告の話を聞くことができ、とても刺激的なイベントでした。
(当ブログメディアでは記事広告やモニター企画を受け付けておりますので、よかったらお問い合わせください)