2015年8月8日に公開となった原田眞人監督作品の映画『日本のいちばん長い日』。
本土決戦を決断するか、ポツダム宣言を受諾して戦争を終わらせるか――。
昭和天皇の苦悩と阿南惟幾(あなみこれちか)をはじめとする軍人や政治家など、日本の未来を考える多数の人々を描いた作品です。
『日本のいちばん長い日』の原作者はノンフィクション作家の半藤一利さん。
実はこの作品、1967年に岡本喜八監督によって一度映画化されています。しかし、その当時は昭和天皇を映画のなかではっきりと描き切ることができない時代でした。
→ 映画『日本のいちばん長い夏』(岡本喜八監督)
しかしながら、岡本作品の中に登場した阿南惟幾や首相の鈴木貫太郎といった人物について、どうも実際の人物像からかけ離れて描かれていると原田監督は感じたんだとか。
原作者の半藤一利さんはご自身のノンフィクション作品「日本のいちばん長い日」を1965年に書いた後、取材等で明らかになった事実をもとに書いた改訂版の「決定版 日本のいちばん長い日 (文春文庫)」を1995年に発売しています(なんと、現在Amazonの歴史ランキングで1位)。今回の原田監督の『日本のいちばん長い日』はこちらを原作にしています。
それだけではありません。首相・鈴木貫太郎の姿を描いた「聖断 天皇と鈴木貫太郎」や阿南惟幾の生涯がわかる「一死、大罪を謝す―陸軍大臣阿南惟幾」をも参考にし、原田監督自身が脚本を書いているのです。
極めつけは、2014年9月に宮内庁が発表したばかりの「昭和天皇実録」も取り入れ、当時の昭和天皇の様子を詳細に再現している点です。
要するに、1967年公開の岡本作品では事実と異なる点があったり人物像がブレていたわけです。そして、その後に半藤一利さんが出版した「決定版 日本のいちばん長い日」をはじめとする様々な詳細資料を基に作られたのが原田作品ということです。もしかしたら、両作品を観た人にとっては後に公開された原田作品に違和感を覚えるかもしれません。
これだけ年月が経過していますから、岡本作品の製作当時は今よりもわからなかったことが多かったんでしょうし、今の方が事実に近い内容の作品を作れるのは当然と言えば当然なのですが、真実を知りたいのであれば原田監督の撮った作品を観るべきだと僕は思います。
そして、やはり、原田監督の描いた阿南惟幾や鈴木貫太郎首相は限りなく本人に近い人物像だったようです。
阿南惟幾のご子息や鈴木貫太郎のお孫さんが原田作品を試写した後に、「これが僕の知ってる本当の父親像です」「おじいちゃまはこういう人だった」と言い、とても感謝したんだとか。その内容はシネマズの公式ライター仲間である大場ミミコさんが原田監督にインタビューしたなかに登場しますのでこちらを御覧ください。
参考:阿南の葛藤を多くの人に届けたい…「日本のいちばん長い日」原田眞人監督単独インタビュー – シネマズ by 松竹
もう1つ。原作者の半藤さんと原田監督がたっぷり語るフォーラムが開催されまして、その様子がシネマズ by 松竹にて全文書き起こしされています。たぶん、映画を観てからこの全文を読むとものすごく理解が深まると思いますので、オススメですよ。
関連:戦後70年の今、戦争を改めて考える―半藤一利&原田眞人監督フォーラム全文
このように新たに判明した事実や他の資料から明らかになった情報を基にし、正しい人物像をはっきりと描いたのが原田眞人監督の『日本のいちばん長い日』なんです。ぜひ、みなさんも劇場で観てみてくださいね。
ちなみに僕は作品をすでに観ましたよ。普段は原作を読まない性格なんですが、Kindle電子書籍版の「日本のいちばん長い日(決定版)」があったので今回は読んでみたいなと思います。
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