三重県大台町の地域活性化をお手伝いしている僕は町の事業者さんを見て回りながら取材をしていまして、2016年11月にとんでもなく面白い製材屋さんに出会いました。
大台町にある「武田製材」です。代表を務める武田誠さんにお話を伺いました。
“三重県で一番ふざけた製材所”はどんな木も手に入る
日本一の清流である宮川が流れる三重県大台町・大台ケ原は宮川杉とか奥伊勢ひのきなどと呼ばれる木が有名であることから、僕は武田製材さんを訪問するまでてっきりそういった県産材を扱う材木屋さんだと思っていたんですね。
しかし、どうやらただの商売人ではなく、自らをビーバーと呼び、かなりの“木フェチ”であることが判明。木を販売しているのだから木が好きなのは当たり前だ、と容易に推測ができるのですが、そのフェチ度がハンパない。しかも、名刺には“三重県で一番ふざけた製材所”とまで書いてあります。
決して広いとは言えない敷地に、所狭しと積まれている木材。その数、100種類以上!
すごいです。見渡す限りの木!日本中からトラックで木を運んで来ては工場内で製材し、コレクションしています!クラフト展に行くのが趣味で、会場で仲良くなった木工職人さんに木を販売することも。武田さんがあまりにも珍しい木を扱っているものだから、職人の間ではよく話題にされるようです。
武田さんはクラフト展で職人が出品している作品を見て、「木材が同じなので個性が出てないのが残念」と、感じているんだそうです。スプーンとかお皿とか作品はそれぞれ職人さんのデザインではあるものの、みんな同じような木なので色や木目が似ているから、どれも似た作品に見えてしまう。「自分(武田製材)のところにはこういった国産材があるから、ぜひ使ってほしい」と、国産材をいろいろ教えてくれました。
例えば、「イスノキ」は宮崎県の木で、硬さの次元が違うんですって。沖縄の三線や住宅のフローリングなどに使われるそうなんですが、あまりにも硬すぎるため武田さんは二度と製材したくない!と力強くおっしゃっていました。
下の写真は僕が「ニッキ」の匂いを嗅いでるところ。あの八つ橋に使われてるニッキです。カレーに入れると風味がいいそうですよ!
また、果実系の木材である「フルーツウッド」は小さなクラフトにぴったり。ジャムヘラやスプーンを作るのに適しているそうです。
別名“雷電木”とも呼ばれる「チャンチン」は富山県によくある木です。庭先に植えると避雷針代わりになるからその名が付いたんだとか。ものすごく割れやすい木で、3年前に富山県から雷電木の原木5本を4トン車に積載して工場へ運んできた際に途中で割れてしまっていて、ウチでは奥さんの雷が落ちた!なんていうエピソードも(笑)
木が好きすぎて、林業を応援する活動へ
ある意味で森のなかに生息している武田さんはどことなく見た目がビーバー似。そこで、「ビーバー雑木隊」なんていうステッカーも作っちゃった(笑)ちなみに、こちらのイラストを描いたのは奥さん。
さらに、今でいうクラウドファンディング的な形で林業関係者から出資を募り、なんと、CDまで製作しちゃった!
日本初の林業応援歌、その名も「杉ロック」(2013年8月11日発売)。
企画・制作は杉ロックの会。もちろん、この杉ロックの会の会長は武田さん。CDのジャケットになってるのも武田さんです。
歌っているのは三重県出身の3人バンド、ネギロックさん(2014年末に解散)。PVがYouTubeにあったので貼っておきますが、出演している林業職人の中田さんが言う「お役所には言いたいことがある。書類ばっか作っても山はきれいにならへん」といったメッセージに深みがありますね。
100種類以上の木を集め、ステッカーやCDまでも製作し、木への愛が本当にすごい。
林業は全国的に衰退が問題になっているんですが、こうやって応援する人がいるといいですよね。地味なイメージもありますが、こんな面白い製材屋さんがいるし、林業だって楽しくできるはずだ!と、革命児みたいな人が増えるといいなぁ~と思います。
これだけじゃありませんよ。
「樹木と木材の図鑑」「木材加工面がわかる 樹種辞典」といった図鑑や辞典がありまして、ここに武田製材が載ってる!もうね、図鑑に協力できるくらい木を持ってるんです。
木を好きな人が木を好きな人を呼ぶ!
愛しているから集められたたくさんの木のおかげで図鑑に載り、その図鑑に載ったことがきっかけでさらなる急展開も。
大阪にいる中学生から、武田製材の木がほしいと連絡があったそうなんです!
世間ではポケモン集めが話題になっていましたが、大阪にはおこづかいが入るとそのお金で日本中の珍しい木の薄い板を買ってコレクションしている中学生の少年がいるんだとか!変わった趣味の中学生がいるもんだなぁ~と話を聞いていると、どうやらガチの「木ヲタ」。
その中学生は武田さんと電話で話をし、木の話で盛り上がったそうです。しかも、木の取り扱いリストの製作を武田さんに依頼し、今度の夏休みに武田製材へ遊びに来るところまで話が進んでいるんだとか。そう、彼にとってポケモンなんかよりも武田製材にある木々が宝の山なんですよ。将来は木の仕事に就きたいそうです。ここまでくると、木ヲタとバカにしてはいけません。ぜひ、木を極めてほしい!!
ありとあらゆる薄い木を販売している武田製材。
そこへ大阪からはるばるやって来る中学生。
まさに木材界のコミケといっても過言ではありません。あとはコスプレする人がいたら完璧でしょう。
大台町・武田製材に何万人もの人が来るのは難しいとは思いますが、こういった形で木を見たい人が10人でも100人でも増えたらいいなぁ~。
武田製材は薄い木だけを売っているわけじゃなく、むしろ本業は梱包用の木材を販売するのがメインで、クラフト用の国産材は今後伸ばしていこうとしている分野です。ぜひ、少しでも木に興味がある人は武田製材でさまざまな木を見てみると面白いと思いますよ!
そうそう、こんなに中が真っ黄色な木って見たことあります?
これは「コトリトマラズ」。トゲだらけで、鳥が止まれないからその名前が付いたそうで、樹脂を煎じて飲むと目薬になる。トップクラスの黄色さであることから、染色や寄せ木細工にも使えます。
その寄せ木細工の小皿がこちら。めちゃくちゃキレイですよね!またツルツルで触り心地もイイ!!
大台町が木を売るためにはさまざまな連携を
木の町、水の町、お茶の町、そして、数年後には柚子の町として名産品の柱が増えるであろう三重県大台町ですが、これら名産品ひとつひとつの力はまだ非力で他県より目立つのはなかなか難しいでしょう。複数の名産品を組み合わせて付加価値を付けたらいいのかなと思いました。
そこで武田製材さんに協力してもらいたいのが「木フェチカフェ」。ネーミングセンスは置いておいて、この木いいよね!、何この木の香りすごい!、といった具合にお客さんがリアルにさまざまな木を見て触って嗅いで楽しめるカフェが大台町にあったらいいなと。
どうしてそんなことを言い出したのかと言うと、この木で作ったカルタをぜひカフェに置いてほしいのです!
これは武田さんの師匠が作った数万円するという木のカルタなんですが、それぞれ同じ種類の木がペアになっていて、同じ模様や色の木を探し当てながら木の名前・木の種類を覚えられる、という作品なんです。ちょっとやらせてもらっただけでハマってしまい、超おもしろかった!こんな木あるの!?と驚きとともに楽しめちゃうんですよね。木の種類がたくさんあるとまさかここまで面白いだなんて。
大台町特産のお茶や柚子製品を味わいながら木で遊べちゃう。なんか暖かみもあるでしょ?そんな木フェチカフェを作ってほしい!こういう複数事業者のマッチングとか横のつながりって商工会がやってくれるのかな?あ、近々オープンすると伺っている「スピカ」さんのところに木カルタを置いてもらったらいいのかも。
やっぱり、大台町は横に面積が広くても人が少ないんでね、そこはぜひコラボして魅力ある特長をどんどん伸ばしていってほしいと思います。
話がつい膨らんでしまいましたが、アイディアがいくらでも出てきちゃうくらい面白かった~!大台町の魅力はまだまだ発掘できそうです!
武田製材の武田さん、めちゃくちゃ熱い方でした♪
【有限会社 武田製材】
通称:雑木屋ビーバーハウス
住所:三重県多気郡大台町江馬158
電話番号:0598-76-0023
FAX:0598-76-0818
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